全体会テーマ「学校の中の「宗教」」
発題 :塚田 穂高(つかだ ほたか)(上越教育大学大学院助教)
コメント:廣瀨 裕一(ひろせ ひろかず)(上越教育大学名誉教授)
司会・進行:近藤克彦(上越教育大学大学院修士課程)・畔上直樹(上越教育大学大学院教授)
【企画の趣旨】
昨年度の上越教育大学大学院・社会系コースでの授業科目・実践場面分析演習「社会」における「公民」分野での演習では,「小学校・中学校・高等学校においてこれまでとは異なる宗教教育が必要である」というテーマで<肯定派><否定派>を設定して準備しディベートをおこなった。大企業による宗教への理解の欠如が誘発する国際問題や公立学校での外国籍児童数の増加の具体例を挙げ,これらを改善するために宗教文化教育や宗教寛容教育等,これまでの宗教教育とは異なる新たな宗教教育が必要なのではと<肯定派>は議論を展開した。これに対し,日本国憲法第20条第3項や教育基本法第15条第2項等の各種法律の観点から,また,現行の教育課程を踏まえた場合から,安易な宗教教育の改革・推進は現実的ではなく,これまでの宗教教育の充実を図ることこそが大切なのではないかと<否定派>は議論を展開した(以上,上越教育大学大学院社会系コース公民分野関係研究室編・発行『2018年度 実践場面分析演習Ⅰ「社会」実践セミナーⅠ「社会」「公民」分野研究報告書』2019年を参照)。
この演習のなかで,グローバル化が進む現代では公立・私立,校種を問わず教育に携わる全ての人が宗教教育への関心を高める必要性や,日本におけるこれまでの宗教教育の推移や現状を十分に理解できていない問題点等が浮かび上がってきたように思われる。これらをきわめて具体的な現場レベルで考えてみれば,「給食の際の『手を合わせましょう』『いただきます』『ごちそうさまでした』は宗教教育とどのような違いがあるのか」や「道徳における徳目と宗教にはどのような関連があるのか」等,次々に疑問が生まれてくるだろう。これらの疑問は学校教育について学ぶ学生や,既に教育に携わっている教職員全てに共通するものではないだろうか。そしてこうした疑問を考えていくには,「宗教」と呼ばれるものを広く捉えながらの議論が必要だろうし,公民分野のみならず歴史教育といった社会科諸分野への目配りもまた必要となろう。
本年度の全体会では,こうした問題を学術的にさらに深めかつ広げてとらえるため,「学校の中の「宗教」」というテーマを設定し,本学社会分野の教員として上記演習にかかわった,宗教学がご専門の塚田穂高氏に報告を依頼した。また,公教育における宗教の取り扱いについて,宗教学・哲学・法学・教育学等の学際的アプローチで研究にとりくんでこられた元本学教員である廣瀨裕一氏より塚田報告へのコメントをいただいたうえで,フロアを交えての全体討論をおこなう。
発題者の塚田氏は昨年4月に本学・社会系コースに着任され,これまで『宗教と政治の転轍点-保守合同と政教一致の宗教社会学-」(単著,花伝社,2015年),『徹底検証 日本の右傾化』(編著,筑摩選書,2017年)等があるほか,本学研究紀要最新号においては「高校「政治・経済」教科書のなかの「信教の自由」「政教分離」-戦後日本社会における政教分離概念の浸透過程の一側面として-」(共著,『上越教育大学研究紀要』39-1,2019年)を発表されている。
コメンテーターの廣瀨氏は昨年度まで本学で教育研究にあたられ,これまで『要説教員養成・採用と免許法~教職志望者の必勝指南~』(共著,共同出版,2012年),『学校の中の宗教』(共著,時事通信社,1996年)等があるほか,「教育基本法上の「宗教」の意味」(『宗教法』29,2010年)を発表されている。
全体討論では,社会科教育や教科専門,小中高の教職員など様々な立場から,参加者各位の活発な議論をお願いしたい。
なお、全体会の時間は120分です。
趣旨説明(5分)
発題:塚田穂高(50分)
(休憩)
コメント:廣瀬裕一(15分)
全体討議と総括